SDGsをビジネスに活かすシンポジウム
2018年3月6日(火)、神奈川・横浜開港記念会館にて、横浜グリーン購入ネットワークがSDGsに関心のある事業者に向けて主催する『SDGsをビジネスに活かすシンポジウム』が開催され、その中で吉本興業がSDGsの取り組みを紹介しました。
最初に主催者である横浜グリーン購入ネットワークよりあいさつがあり、今回のシンポジウムでは「中小企業のみなさま方に、社会的な意味だけでなく、経営的意味をどうつかんだらいいかを持ち帰ってもらいたい」と本シンポジウムの開催意義を語ります。
2018.03.06
第一部では、一般社団法人SDGs市民社会ネットワークのSDGs事業プロデューサー 地域連携担当アドバイザー・新田絵理子氏を講師に迎え、基調講演「SDGsをビジネスに活かす」(概論と最新の動向)が開催されました。
「SDGs市民団体ネットワーク」とはどんな団体なのかという自己紹介が行われたあと、これからSDGsの活動に取り組もうとしている事業者に向け、まずはSDGsとはどういったものかを知ってもらうために、SDGsの17の目標、169のターゲット、230の指標について説明する新田氏。また、その大事なポイントとして ①「つづかない」世界を「つづく」世界に「変革」するための目標であること、②「貧困のない」「持続可能な」世界を目指した目標であること、③日本を含む先進国も対象となっている目標であることの3つを挙げ、日本を含めた世界中の問題であることが改めて示されます。
さらに、現在、日本におけるSDGsの推進状況についてや「協働とSDGs」をテーマに講演は進み、SDGsをビジネスに活かすためにはどんなやり方・考え方をするべきなのか、どう始めればいいのかといった考え方のヒントが散りばめられた講演となりました。
第二部では実際の企業の取り組みを紹介することに。まずは吉本興業がSDGsへの取り組みを紹介しました。
2017年1月から取り組みを始め、まだ1年余りであることや、まずは理解することからと思い、吉本興業の社員全員で勉強会を行うことから取り組みをスタートしたこと、その勉強会ではさまざまなセクターの方にも参加してもらったことなどが説明され、自分たちがまず取り組むべきことは、芸人の言葉や自分自身の言葉で、多くの方にSDGsを伝えていくことだと思ったことなどが語られます。
続いて、SDGsに取り組む以前から、実はSDGsの活動につながることをしていた例として、2011年からスタートした「あなたの街に住みますプロジェクト」で、地域の人と一緒にその地域を盛り上げる活動をしていたことや、大震災の際に被災地に芸人を派遣し、被災者に笑顔を届ける「あおぞら花月」という活動をしていたことなどを挙げます。
さらに、その他の取り組みとして、吉本が行う4月/沖縄「島ぜんぶでおーきな祭」、8月/北海道「みんわらウイーク」、10月/京都「京都国際映画祭」)でのSDGsの啓蒙活動についても紹介しました。
「島ぜんぶでおーきな祭」のVTRを流し、オリジナル動画の制作やスタンプラリーの実施、SDGsをテーマにした写真展やシンポジウムの開催、『僕らの地球学校』(テレビ東京)などを紹介。また、今年で10回目となる「島ぜんぶでおーきな祭」では、「みらいへつなぐ、じもとのちから。」をテーマにCMを作る「JIMOT CM REPUBLIC」を立ち上げたことなどが語られます。
最後に、SDGsについて、吉本では「まずは知っていただくことから」と、さまざまなエンタメの形でお客さんが触れられる機会を積極的に作ってきたことを話し、SDGsへの取り組みには
①SDGsとは何かを知ること
②自分のこととして考えてみて、自分では何ができるかを考える
③自分にできることを行動に起こす
の3段階があると考えていることを明かした上で、「少しづつ進んでいくことで、SDGsの目標をみなさんで達成したい」と話し、吉本興業の取り組み紹介は締めくくられました。
続いて、株式会社大川印刷の大川哲郎氏より、大川印刷のSDGsへの取り組みが紹介されます。
大川印刷が崎陽軒のシュウマイ弁当のパッケージなどを印刷している老舗の印刷会社であるという自己紹介があったあと、2017年にSDGsに取り組む内外の企業の事例を聞いたことがきっかけで、世界の課題が整理されれば(=それを経営計画に盛り込めば)、世界の課題解決につながる可能性があるのではないかと考えたことから経営計画に入れることにしたと話す大川氏。
また、その経営計画の作り方について「経営計画策定ワークショップ」を開き、17の目標ひとつひとつについて、「この目標はどんな活動をすれば達成されるか」を社員一丸となって考えたことや、印刷インキのノンVOC化など環境印刷についても努力を重ね、結果として外資系企業との新規取引が実現したこと、また環境印刷によって作成された「セパレートエコカレンダー」などの製品のセールスが好調であることなどが説明された上で、地域の中小企業がSDGs達成に向けて取り組むことの意義についてや、活動にともなって起こった従業員への効果や変化、さらには今後の活動の目標などが語られました。
最後はパネルディスカッションが行われ、「何から始めたらいいかわからない」という参加者には「小さな意識でも変わることがあると思うので、身近なことから始めていくといいと思う」などのアドバイスがなされたりするなど、活発な意見交換がなされました。
最後まで熱い議論が交わされた『SDGsをビジネスに活かすシンポジウム』。「今日のきっかけが、みなさんの船出にふさわしいものとなることを願っています。みなさんがSDGsを利用して、ますますのご発展をされますように」という主催者の締めの言葉通り、中小企業の方がSDGsの経営的意味をつかむことができたであろうシンポジウムとなりました。